当然ですが、あなたは自分の魅力を語ることができますでしょうか?仮にそれができていないんだとしたら、自分自身でそれを語らずして、代わりに語ってくれるツールを持っていたら、今のあなたはどうなりますでしょうか?
もし今、あなたがそういうものを一切持つことなく、自分の魅力をまったく語っていないのにも関わらず、すでにビジネスがうまくいっているのであれば、あなたは起業家として相当な能力の持ち主だと思われます。
おそらく商品の説明や、お持ちのスキルや商品のレベルが非常に高く、それが故にビジネスの結果を出すことができている非常に優秀な起業家だと想像します。
ただ、そんな優秀な起業家さんたちに限って、僕のところによく相談に来られるのはなぜでしょうか?
それは、いくら売り上げても、どんなにチヤホヤされても、それだけでは起業家の本質的な欲求を満たすことができないからだと思います。
「自分の魅力、自分自身で勝負したい!」
どこまでいっても起業家は、この初心とも言うべき本質的な欲求を持っていて、それを実現したいという思いがある。そんなことを日々、感じますし、それがビジネスで実現できていない場合、起業家さんの中で、ある種のモヤモヤが大きくなっていく。
「自分の魅力、自分自身で勝負したい!」という欲求の増幅は、傾向としては、自分の魅力を語ることなく、どんどん売り上げだけは上がっていってしまう人に特に多く、売り上げているのに、結果を出しているはずなのに、何かが足りないという不足感がそれをさらに増幅させていきます。
「自分は成功しているんだから!」と自分に言い聞かせてみるものの、不足感は消えてはくれない。しかも、自分自身では何が足りていないのかもわからず、その不足感は増す一方だ!そうなっている起業家さんを僕はたくさん見てきました。そして、そういう方々に、
「本当はあなたは、自分の魅力、自分自身で勝負したい!そう潜在的に思っていたのではないですか?」
なんてことを質問すると、「まさにその通りです!」と、はっとされる方が非常に多い。これが僕がこれまで、たくさんの方の冊子や電子書籍作りに携わらせていただく中でお会いした方々の特徴です。
そして僕がそういう方々のお仕事をさせていただいた後、その起業家さんたちに起こる変化もまた、共通しています。
それは、これまでは商品やスキル、お金や実績で人(従業員やお客さん)が集まっていたのが、起業家さんの持っている世界観で人が集まってくるようになることです。
そしてそれができるようになるとほとんどの場合、売り上げも倍増します。「これこそが自分が邁進するべきビジネスの方向だ!」と一気に情熱が乗って起業家さんの迷いがなくなる感じで。
僕がこれまでストーリーテラーとしてたくさんの起業家さんたちのストーリー作りに携わらせていただいた中で、起業家さんたちに起こしてきた変化です。
それほどまでに自分の魅力を自分の代わりに語ってくれる物語を持つことには力があります。
本書籍は、自分の魅力を自分の代わりに語ってくれて売ってきてくれる読み物の名前を「道売り物語」と名付けて解説していくものです。どうやったらそんな物語を作ることができるか?自分の魅力をどうやって物語に加味して人に伝えるのか?そしてそれを持ったら起業家はどう変わるのか?
僕がこれまで百冊を超える起業家さんの道売り物語を書いてきた中で見えた「道売り物語」のパワーや魅力について解説していきますので、ぜひ、最後までお付き合いくださいませ。
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これから始まるストーリーは、まさにそんな悩みをお持ちだった一人の起業家の方、蔵前さんという方の相談に乗った時のエピソードをもとに書かれています。ビジネスパートナーである僕の妻からの紹介の方です。
それでは始まりです。
突然ですがここで少し、自己紹介コラムを書かせてください。自己紹介もさせてもらってないのに、物語が進んでいってますからね、失礼致しました。ちょっと長くなりますが、お付き合いいただければ幸いです。
文中、僕は大手の住宅メーカーの営業職として働いていたとお話ししていますが、実は僕、新卒で働いた会社を4ヶ月で辞めて、半年後に第二新卒として住宅メーカーに再就職してるのです。そしてそれには理由があります。
大学在学中、どっかの社長さんが書いた本で、「経営者は自分の会社を売り込む営業マンなんだから、経営者になりたければ営業職を経験すべきだ。」みたいなことを読んで、当時から経営者になりたかった僕は、「どうせ就職するなら、”難しいとされる営業職” についたほうがいいだろう!」と、新築分譲マンションを販売する不動産営業の会社に就職しました。そこで僕はとんでもない人と出会うことになるのです。
都内のモデルルームに配属された時にそこにいたEさんは、僕が入社する1ヶ月前に中途採用でその会社に入った営業マンでした。大手住宅メーカー数社で営業を経験し、住宅業界では伝説の営業マンと言われていた人らしく…、じゃあ、なんでそんな人がここにいるんだろう?とか思いつつも、ありがたいことに僕は、そのEさんにかなり可愛がっていただけることになります。「この人の下で営業を学んで起業家になるための勉強をしよう!全部吸収してやる!」当時の僕は鼻息が荒かったですね。
しかし、Eさんはそんなやる気あふれる僕にこう言うのです。「新築分譲マンションの営業なんて営業じゃないよ。こんなところでは営業力なんてつかない。まして経営者を目指すならここじゃない。」
「新築マンションの営業は営業じゃない?」「ここでは営業力は身につかない?」「何を言ってるんだこの人は?」とか思うのですが、このEさんが凄いのです。机では座りながらだいたい寝てるくせに、接客に出たらほぼ契約を決めてくるし、いきなり会社でトップの成績を上げるし…、「何者だ?この人は?」と、会社も周りの同僚も一目置く存在に一瞬でなってしまったのです。
「マンションを売るなんて簡単だよ。」いちいち鼻につく言い方をされるのですが、確かに本当に簡単に売ってくる…。僕はEさんにますます興味を持たざるを得なくなるのでした。
「どうにか成績を残してEさんに認められたい!営業力がついたと言わせたい!」がむしゃらに働いた僕は入社すぐに3戸のマンションを販売し、新人賞を受賞。「Eさん、見ました?どうですか!」と言わんがばかりにその成績を見せつけてみるのですが、Eさんときたら「倉地くんが売れたのは営業力があるからじゃない。たまたま物件が良かっただけ。そんなのは小手先の売り方だよ。そんな売り方はマンション業界でしか通用しない。」と小馬鹿にしてくる…。正直、むかついてむかついて仕方がありませんでしたね。
でも思えば、よく飲みに連れて行ってもらったり、休日も僕に付き合ってくれたり、営業のいろはを教えてもらったりと、貴重な体験をさせてもらっていたと思います。今でも、なぜ超エリートの彼が、僕をそんなに可愛がってくれていたのかいまいちよくわかりません。(ちなみに今ではEさんは大手の住宅メーカーの経営者です)
入社から3か月くらい経った頃でしょうか。僕はそのEさんから衝撃的なことを言われたのです。
「倉地くんは今すぐこの会社を辞めて大手の住宅メーカーに行きなさい。」
「はあ?何を言ってるんだ!?この人は?仮にも僕の上司でしょう?その人が会社を今すぐ辞めろって。本気か?」でも顔がマジなんですよね。
「なぜ、せっかく入った会社を辞めないといけないんですか!しかもなぜ大手の住宅メーカーなんですか?」尋ねるとEさんがこう言います。
「マンション営業は売って終わりの販売員にすぎない。契約したら金消(ローン実行)までお客さんと会うこともない。責任が伴わない売って終わりのただの販売員。あるものをただ案内して売るだけ。やってることはファミレスの店員と何も変わらない。そんな業界で売る力を身につけても、本物の営業力がついたとは言えない。倉地くんは経営者になりたいんでしょ?だったら売ってからがスタートの住宅営業で営業力をつけなさい。今からでも遅くないから転職しなさい。一番難しいとされる住宅営業で勝負しなさい。レベルの高い人たちがいる世界を見てきなさい。」
もう無茶苦茶です。日本には、石の上にも三年という言葉があるじゃないですか。新卒で入った会社を数ヶ月で辞めて再就職?あり得ないでしょ!とか思うのですが、ただ、Eさんは、真剣に僕のために助言をしてくれているとも感じる…。そしてどうしてもこの言葉が引っかかるのです。
「マンション営業では本物の営業力は身につかない。レベルの高い人たちがいる世界を見てきなさい。」
僕が営業職を選んだ理由は経営者になるために営業力を身につけたかったからです。だからもし、彼が言うように、この会社にいて、それが身につかないんだとしたら、確かにここにいる意味がない…、一理ある…。レベルの高い人たちの世界というのも気になる…。入社から4ヶ月後、僕は彼に半ば、そそのかされるような形で転職を決意します。
「大手の住宅メーカーが、たった数ヶ月で新卒で入った会社を辞めた、しかも一流大学卒でもない僕なんかを、今さら採用してくれるんだろうか?」一抹の不安はあったものの、僕は大手住宅メーカーに履歴書を送り面接を経て、無事、大手3社から合格をもらうことができ、その中の1つ、Sという大手メーカーに再就職を果たしました。まあ、そんな無計画でデタラメな生き方をしてたから、当時の彼女に愛想を尽かされてしまったんですけどね(笑)勝手に転職を決めて、突然、東京から愛知に引っ越すって伝えた途端…、そりゃ振られますね。
そんな経緯を経て、あの展示場配属初日です。結局その後、僕は瞬く間に6棟の契約を取ることになったわけです。失恋エピソードを語るあの手法で、ですね。ただ、その後がきつかった…。
マンション営業ってほんと売って終わりだったんですよね。売った後、営業がやることは特にない。でも住宅は違います。売ってからやることがとにかく多い。設計図を詰めていく作業の打ち合わせ、金額の最終決定、地鎮祭、棟上げ、竣工、引き渡し、入居後のフォローまで、すべて営業がやる必要があるわけです。(当時、僕がいたメーカーでは)
入社して半年から1年は、ほぼ毎日2、3時間しか寝れませんでしたね。しかも売った棟数も多いからもう大変。新人で仕事のやり方がわからない僕は、契約を取ったはいいものの、対応がうまくできず、結果、契約した6人の方全員から解約したいと言われてしまいました。
正直舐めていた…。マンションは売って終わり。それが感覚として身についてしまっていたんだと思います。その雰囲気がお客さんに伝わってしまったんでしょう。お客さんたちから言われたのが、「倉地さんを信頼して買ったのに!」「倉地さんだから契約したのに契約前と契約後が違う。」「期待した倉地さんと違った。」
倉地さんだから買ったのに…。
この言葉は重かった…。「マンション営業なんて本物の営業じゃない。」Eさんが言っていた意味はこういうことだったのか…。確かに売って終わりの営業では、本物の営業力は身につけることができなかったかもしれない…、信頼で売り、その信頼に応えることができる人こそが、本物の営業だということをEさんは僕に教えたかったんだ…。だから住宅営業に行けと言ったのか…。そんなことを痛感する日々でした。
でも、誇れることもあって、6件契約してすべての方から解約したいと1回は言われちゃったんだけども、結局、誰も解約にはならなかったことなんですよね。まあ、信頼回復のために、その後の半年間は、契約どころじゃなかったですけど(笑)でも、一度は失った信頼を取り戻せたこと、すべての方の新築がちゃんと完成したこと、この時の経験は今、僕の起業家としてのマインドというかポリシーに反映されているように思います。
道売りと術売りの違いは、”お客さんが商品ではなく売り手で買う” ということです。こちらを信頼して買う、人で買う。だから売ってからがスタートになります。売り手ワールドに惚れてもらって買ってもらうわけですから、ある意味、術売りよりも責任重大です。買い手が売り手に期待している思いは、売り手が思っているものよりも何倍も強いかもしれない。その期待を裏切った時の怖さ…。住宅営業に携わり痛感できたのでした。
でももし、その期待に応えることができて、買い手の信頼を増幅させることが出来た場合、ビジネスは大きくなり、売り手ワールドはどんどん大きくなっていく。これ、ちょっと語弊があるかもしれませんが、道売りの場合、主役は ”売り手” なんです。だから主役である売り手は、自分の世界観を壊してはいけない。
道売り物語はあなたの魅力で人を集めることができます。自分の道でファン客を集め、囲まれながら走っていくビジネスが作れちゃう。簡単ではありません。でもそれができた時の喜びは術売りのそれを遥かに凌駕します。
起業家は売って終わりのビジネスだってできる。中国あたりから安価な雑貨でも仕入れてアマゾンあたりで大量に売ったっていい。稼げますよ。ビジネスとしては悪くない。でもそんなビジネスでは満足できない人がいる(事実そういう人たちが僕のところに来る)、自分のファンを持ち、自分の世界観でビジネスを作っていきたい起業家がいる。
住宅営業経験者として言わせてもらえば、やっぱ、売って終わりのビジネスより、売ってから顧客と共に始まるビジネスの方が面白い。血が通うビジネス、信頼をやり取りをするビジネス、そして自分の世界が作れるビジネス。そこには常に売り手と買い手の間にドラマと感動がある。その面白さを教えてくれた伝説の営業マンEさんと住宅営業業界に感謝ですね。
さて、続きは第三章になります。道売り物語を持つと広がっていく未来についてお話ししていきますので、ぜひお付き合いくださいませ。
小冊子を郵送していた頃の妻。今ではこれを代わりにアマゾンkindleがやってくれる↓
テンプレートに沿って作った僕の書籍の章立て作業↓
おしまい
さていかがでしたでしょうか?内容が少し難しかったかもしれませんが、ここまでついて来てくれているあなたはよっぽどだと思いますし、これまでの文章で何かしらの気づきがあったとしたらこんなに嬉しいことはありません。
実はこの読み物が僕の初めての道売り物語になります。これまで妻やクライアントさんのストーリーは山ほど書いてきたんですけどね、自分のものは書いたことがなかった。(妻との共著はありますが)というよりも書けなかった…。自分のことは自分が一番わからないとはよく言ったものです。
でも僕はどうしても書いてみたかった。妻やクライアントさんたちのように、自分の道売り物語で自分の仲間を集めてみたかった。その切なる思いが大きくなっていき、「道売り物語作り方テンプレート」が生まれました。そしてそれに沿ってかなり基本に忠実に書いたのが、ここまでお読みいただいたこの読み物ということになります。
いくらテンプレートに沿って書いたとはいえ、自分のことを書いてるので、もしかすると読みにくい点があったかもしれません。お許しください。
でも、書き終えてみて感じるのは、「自分の世界観はけっこう表現できたかな」と。上手く書けたとかそういうのではなくて、「自分の見えてる世界は伝えられたぞー!」という清々しい感じがしてます。これ、実は、僕がクライアントさんたちの物語を書いた時、いただく感想とまったく同じなので、そう思うとこのテンプレートは、ちゃんと僕を正しい書き方の方向に導いてくれたのかなー、なんて実感しています。出版のための書籍でこんな好き勝手書いたら怒られちゃいますね。
正直、僕は仕事には困っていません。僕に道売りストーリーを書いて欲しいという方は多くいます。ですので、この物語を書いたのは、僕に道売り物語を書いてほしい人を集めたいからではありません。
僕の仕事、道売りストーリーテリングという働き方を僕と一緒になって喜びを共有し、この働き方の素晴らしさをみんなで分かち合いたい、そんな場所を作りたい。そんな思いからこの物語を書かせていただきました。その思いがあなたに少しでも伝わったのだとしたら大変嬉しいです。
ーすべては物語から始まるー
僕の尊敬する世界的神話学者ジョーゼフ・キャンベル大先生の言葉ですが、いつの時代も人の心を動かすのは物語の力です。
そしてそのストーリーの力は、この現代においても、ビジネスにおいても、”不変なんだ” ということをこの読み物を通じて、感じていただけたのであれば幸いです。
これまで長い文章にお付き合いくださいまして感謝いたします。あなたのビジネスのますますの発展を心よりお祈り申し上げて、終わりにさせていただこうと思います。本当に本当にありがとうございました。
道売り物語プロデューサー
倉地類人